注射による治療は危険?

注射による治療とは

 

ツラい花粉症の症状を和らげる治療法の一つに「注射」による方法があります。

 

花粉症に効く注射とは?注射による治療は他の病気の際にもよく用いられる方法ですので、決して珍しいものではありませんが、花粉症の治療に用いる注射って正直どんなものなのか私自身知りませんでした。

 

花粉症の注射とは?

 

ですが、「とても良く効く」とか「1シーズン注射1本で乗りきれる」、「副作用が心配」など近年、口コミなどによりさまざまな噂や評判が広がっています。

 

そこで花粉症に用いられる注射の種類やどういう薬剤を使用しているのか、また、効果や副作用の有無などについて調べてみました。

 

現在、花粉症の治療に用いられる注射は5種類ほど存在します。

 

 

1 ヒスタグロビン注射

ヒスタグロビン注射

 

減感作療法の一つ「非特異的減感作療法」と呼ばれるもので、主にアレルゲン(原因抗原)が特定されていない場合に用いられる治療法です。

 

たとえば花粉症の原因がスギ花粉と特定されていれば、そのアレルゲンを投与する「特異的減感作療法」が効果的ではありますが、アレルゲンが特定されていない場合でも肥満細胞からヒスタミンが放出されるメカニズムは変わらないので、そのヒスタミンの抗体を作る働きを持つ「ヒスタグロビン(ヒスタミン加人免疫グロブリン製剤)」を投与することによって放出されるヒスタミンへの耐性を高めることにより花粉症の症状を抑制するというものです。

 

※「ヒスタミン」の反応自体を抑制するので、花粉症の各種症状はもとより、アレルギー性皮膚炎(アトピー、蕁麻疹、慢性湿疹)、気管支喘息などの症状にも効果が期待できます。

 

このヒスタグロビンは他人の血液(献血)から採取された免疫グロブリンから生成されていますので感染症を心配する向きもありますが、現在では厳格な製法が導入され感染症の心配はほとんどないといわれています(ただし、リスクは皆無ではありません)。

 

ヒスタグロビン注射による副作用は比較的少ない方ですが、副作用の可能性としてショック症状、過敏症、蕁麻疹、発疹、喘息発作、眠気、頭痛、嘔吐、発熱、注射部位反応などが挙げられます。

 

また、次のような患者さんには基本的に投与は禁止されています。

 

・ヒスタグロビン注射・当該薬剤で過去にショック症状を起こした人

 

・激しい喘息発作症状を起こしている人

 

・月経直前または期間中の女性

 

・妊婦または妊娠中の可能性のある婦人

 

・著しく衰弱している人

 

また、ヒスタグロビン注射を投与した方は生ワクチン(疹、おたふくかぜ、風疹など)摂取の効果が抑制されるので、生ワクチンの接種は当該注射の治療後3ヶ月以上開けてから実施することが望ましいです。

 

ヒスタグロビン注射は皮下注射で、その効果は比較的緩やか方です。なるべく花粉症の症状が出現する前から治療を始めることを推奨しています。

 

注射の頻度については患者さんの症状や医師の判断によって違いはありますが、1週間に2回程度の間隔で6回以上続けることが効果的といわれています。

 

当該治療には保険が適用されます。(1回の治療費は1,500円以下との口コミもあります)

 

2 ノイロトロピン注射

ノイロトロピン注射

 

ノイロトピンとは、ワクシニアウィルスという安全なウィルスをウサギの皮膚に注射し炎症を生じた皮膚組織から抽出分離した非タンパク性の活性物質を含有する注射液で、疼痛を軽減する効果があり、慢性の腰痛や肩こり、各種痛みの症状によく用いられます。

 

ノイロトロピンは消炎鎮痛剤などのいわゆる「痛み止め」とは違い、神経系にのみ作用するため長期に投与しても副作用はほとんどなく、痛みの程度や頻度を減らす働きがありますが、なぜ花粉症の症状にも効果があるのかははっきりと解明されていません。

 

しかしながら花粉症の幅広い症状に効果が期待でき、特に目のかゆみをはじめ皮膚のかゆみや炎症には効果が高いといわれます。ただしこれらの効果は個人差が大きいとされています。

 

ノイロトロピン注射ノイロトピン注射のメリットは、他の薬や注射の併用も問題がなく、薬剤の成分が体液に近いため安全性が高く駐車による痛みも少ない点があります。

 

花粉症治療に用いられる場合、ノイロトピン単独での投与よりも、前述のヒスタグロビン注射と併用される場合が多いようです。

 

副作用もほとんどありませんが、可能性としてはショック症状や発疹、眠気、ほてりなどが挙げられます。

 

ノイロトピン注射は静脈注射(筋肉・皮下注射も可)です。効果については個人差が大きく、その日のうちに効く人もいるようです。注射の間隔は症状や効果によって判断されますが、効果出現の目安は2週間以内とされています。

 

保険が適用され、料金は分量や医療機関によって違うようですが、1回1,000円程度と思われます。

 

 

3 ステロイド(副腎皮質ホルモン)注射

花粉症の治療において「ステロイド注射」と呼ばれている治療法は、正式には「徐放性ステロイド療法」と呼ばれるもので、主に「トリアムシノロンアセトニド水性懸濁注射液(商品名:ケナコルトA)及び「メチルプレドニゾロン酢酸エステル」(商品名:デポ・メドロール)が用いられているようです。

 

 

(1)トリアムシノロンアセトニド水性懸濁注射液(ケナコルトA)

 

ケナコルトA

 

適応症状としては、内科・小児科領域をはじめ、外科、整形外科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、眼科皮膚科など各領域全般にわたり、いずれも重症に対する対症療法として用いられます。

 

当該薬剤を投与することによって起こり得る副作用は以下のとおりです。

 

・誘発感染症、副腎皮質機能不全、糖尿病、消化性潰瘍、膵炎、精神変調、うつ状態、痙攣、骨粗鬆症、緑内障、後B白内障、血栓症、ショック、アナフィラキシー、喘息発作の増悪、失明、視力障害、月経異常、下痢、嘔吐、胃痛、胸やけ、腹部膨満感、多幸症、不眠、頭痛、めまい、口渇、食欲不振、食欲亢進、筋肉痛、関節痛、局所組織の萎縮による陥没、浮腫、血圧上昇、眼球突出、白血球増多、C瘡、多毛、脱毛、色素沈着、皮下H血、紫斑、線条、@痒、発汗異常、顔面紅斑、創傷治癒障害、色素脱失、脂肪織炎、発熱、疲労感、体重増加、精子数及び活動の増減

 

ケナコルトA特に妊婦又は妊娠している可能性のある婦人への投与は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとされ、また、高齢者への長期投与については、感染症の誘発、糖尿病、骨粗鬆症、高血圧症、後B白内障、緑内障等の副作用があらわれやすいので、慎重に投与することとされています。

 

用法としては通常、成人の場合で1回の投与量は20mg〜80mgを1〜2週おきに筋肉内に注射します。年齢や症状によって増減されます。

 

このトリアムシノロンアセトニドという薬はとても強力で、たとえばケナコルトA40mgという量は、通常内服薬として用いられるステロイド剤(プレドニン、リンデロン、デカドロン等)に換算すると、錠剤を40錠〜80錠いっぺんに飲む量に値します。

 

また、トリアムシノロンアセトニドは他のステロイド剤と比べて薬の作用が血中に残りやすく、半減期(血中濃度が半分になること)が約5日間もあり、その後も2〜3週間は濃度を持続させるため相応の副作用が現れやすいといわれます。

 

1回の注射における治療費は、用量や医療機関によって違いますが5,000円〜1,000円程度と思われます。

 

(2)メチルプレドニゾロン酢酸エステル(デポ・メドロール)

 

デポ・メドロール

適応症状・副作用については、前述したケナコルトAとほぼ同様です。

 

用法としては通常、成人の場合で1回の投与量は40mg〜120mgを1〜2週おきに筋肉内に注射します。年齢や症状によって増減されます。

 

※ケナコルトAとデポ・メドロールの比較についてもう少し書きたかったのですが、適当な資料が見つかりませんでした。今後、機会をみて調べたいと思います。

 

 

 

まだまだ、注射の種類はありますが、ここでは主なものだけをお伝えしました。

 

ステロイド注射は要注意!

 

ステロイド注射はおすすめしません!いずれにしても、1のヒスタグロビン注射と2のノイロトロピン注射を併用した治療法は、副作用も少なく安心な治療法だと思います。ただし、効果には個人差が伴いますので自分の症状に効くかどうかは経過を見ないと分からないようです。

 

3のステロイド注射は、決しておすすめはしません。この治療はあくまで他の治療法を試しても効果がなく、どうしようもない場合に限って行われるべきだと思います。

 

ですが、未だに治療の内容を正確に伝えないまま「効果バツグン」といった触れ込みで実施している医療機関もあるようですし、それに載って安易に受診する方も少なからずいるようです。

 

 

いくら花粉症に効果的とはいえ、自分の身体を蝕むような治療法に飛びつくようなことだけはやめましょう。