「対症療法」と「根治療法」の違いとは?
花粉症に限らず、病気の治療法には「対症療法」と「根治療法」の2つに大きく分けられます。
「対症療法」とは、病気の表面的な症状を抑制させたり消失させたりすることを目的とした治療法で、ある意味一過性の治療法です。(「対処療法」という言葉が使われることがありますが、正確には対症療法が正しい)
これに対して「根治療法」とは、病気そのものを完全に治すことで、治療法としては一番望ましい方法です。(「原因療法」という言葉がありますが、これとは少し概念が違います)
この2つの治療法を単純に比較すれば、おそらく誰しもが病気そのものを完全に治す「根治療法」の方が症状を一時的に取り除く「対症療法」よりも望ましいと思うはずですが、実はそう単純ではありません。
もちろん同じ条件でどちらの治療法も存在しているなら、間違いなく根治療法を選択しますが、一般的には根治療法の方が格段にハードルが高いのです。
たとえば、薬を例にとっても対症療法に用いられる薬は安くてどこでも手に入るのに比べ、根治療法に用いられる薬は高価で手に入り難かったりします。(あくまでも例です)
他にも治療期間が長かったり、即効性がなかったり、そもそも根治療法自体が存在していないものも多くあります。
ですから病気の症状とそれらの条件を比較し自分の状況にあった治療法を選択しなければなりません。
花粉症の治療さて、話を花粉症に戻しますが、花粉症における対症療法と根治療法とはいったいどんな治療法なのでしょうか。
まず「対処療法」については、花粉症の症状を抑制する処方薬があります。
代表的な処方薬としては、抗ヒスタミン薬や第二世代抗ヒスタミン薬、ステロイド、Th2阻害薬、漢方薬などの症状全般を抑制する効果があります。
これらは内服薬や注射により投与します。
また飲み薬以外でも、鼻の症状を抑制する点鼻薬や目のかゆみを抑制する点眼薬など局所的な効果をもたらす外服薬もあります。
ただし、これらの処方薬の中には副作用の関係で長期間の服用が適さないものもありますので注意が必要です。
他にも手術により鼻の粘膜を除去する方法やレーザーを粘膜の粘膜に照射し症状を抑制する方法などもあります。
広い意味では「民間療法」と呼ばれるさまざまな方法が数多く存在します。(多すぎてここでは紹介できません)
一方、「根治療法」についてですが、結論からいうと「花粉症の根治療法は現在のところ存在しない」というのが正解です。
ただし、根治療法に近い(あるいはほぼ同等)といわれる治療法が最近になって登場し話題になっています。
その治療法とは「舌下減感作療法」と呼ばれるもので、具体的には花粉症のアレルギー症状の原因となるスギ花粉のエキスを舌下から吸収させ徐々に身体に慣らすことによってアレルギー反応を起こさない体質に改善する方法です。
実は今までも免疫療法と呼ばれる減感作療法は存在していたのですが、週に1〜2回、2年以上も医療機関に通わなければならないことや皮下注射であることなど、患者さんにとっては結構負担の大きい治療法でした。
それに比べ舌下減感作療法の場合は、通院は1ヶ月に1回程度でいいこと、自宅で服用できること、注射と違って痛みがないことなどメリットが多いのが特徴です。
まだこれから始まる治療法なので効果についてははっきりと明言できませんが、いずれは根治療法として扱われる可能性も否定できません。
さらにこの舌下減感作療法は保険が適用さっるのでさらに安心です。
※画期的な治療法として注目を集める「舌下減感作療法」ですが、残念なことに第1号として今年5月頃に発売が予定されていた「シダトレン」(鳥居薬局)の発売が10月以降に延期されることになりました。
いずれにしても、「対症療法」と「根治療法」、どちらを選択するかについては、費用対効果や治療期間、その他ものもろの条件を総合的に判断する必要がありそうです。