もし、生の魚介類を食べた後にアニサキス症の症状が現れた場合、いったいどのような治療をするのでしょうか。

 

アニサキス症の治療法は発症部位によって分かれます。

 

1.胃アニサキス症の場合

胃で発症する「胃アニサキス症」の場合は、内視鏡(胃カメラ)により胃の中のアニサキス幼虫を確認し、内視鏡先端から伸びる「鉗子」と呼ばれるピンセットのようなものでアニサキス幼虫をつまんで取り除きます(内視鏡は、食道に刺さった魚の骨や子供が飲み込んでしまったコイン、ボタン電池を取り除くなどにも用いられます)。この治療法によってほとんどの場合、激しい痛みは短時間でに解消されます。

 

内視鏡検査でアニサキス幼虫を除去

 

ただし胃の痛みが相当激しい場合は、まずステロイドと抗炎症薬を併用して痛みをを緩和した後にアニサキス幼虫の摘出を行う場合もあります。

 

なお、ごくまれにアニサキス幼虫が数匹刺さっている場合もあり、一度の摘出で痛みが改善されない場合は再度医療機関を受診する必要があります。

 

2.腸アニサキス症の場合

腸で発症する「腸アニサキス症」の場合は、胃アニサキス症のように内視鏡検査による確認は出来ませんので、食事歴や症状やCT等の画像などから総合的に判断し、、被ヒスタミン剤(ステロイドなど)と抗炎症薬を併用した“対症療法”により症状の緩和を図ります。

 

腸アニサキス症の場合は対症療法が有効

 

アニサキス幼虫は、ヒトの体内ではせいぜい2〜3日程度しか生存できませんので、この間は対症療法を継続します。

 

なお、腸アニサキス症の場合、腸管の造影に用いる造影剤(ガストログラフィン)が、アニサキスの駆除に効果があることが確認されており、同造影剤の服用が試みられる場合もあります。

 

また、腸アニサキス症の場合、時々、腸閉塞や腸穿孔を併発する場合もあり、その場合は外科的手術が必要となります。

 

3.消化管外アニサキス症

アニサキス幼虫が消化管を通り抜けて他の部位で発症す「消化管外アニサキス症」の場合は、移動した部位によって症状が異なります。

 

外科的手術が必要な場合もある

 

大網や腸間膜、腹壁皮下などに移行すると「穿孔性腹膜炎」「寄生虫性肉芽腫」なるこがあり、外科的手術が必要となる場合もあります。

 

※アニサキス症の部位による区分については「アニサキス症の症状」を参照)

 

アニサキス症の治療は対症療法のみ

胃アニサキス症、腸アニサキス症、消化管外アニサキス症のいずれの場合であっても、根本から治す治療法根治療法といいます)は今のところありません

 

アニサキス症の根治療法は今のところない

 

その最大の理由は、アニサキス症の症状は“アレルギー反応”によるものであるからです。

 

アニサキス症の原因であるアニサキス幼虫を摘出する治療は、根治療法と思われがちですが、それによってアニサキスアレルギー自体を解消されるわけではありません。

 

たとえばアレルギーの代表格である「食物アレルギー」「花粉症」「アトピー性皮膚炎」ですら、完全な根治療法と呼べるような治療法は今のところ見つかってません。

 

ですから、今のところは症状が現れた都度、症状を緩和する“対症療法”を施すしかないのが実情です。

 

 

花粉症などに有効とされる“アレルゲン免疫療法(減感作療法ともいう)”は、アレルゲンとなる物質をあえて低い濃度で体内に取り込ませ、その濃度を徐々に上げていくことで、アレルゲンに慣れさせ過敏な反応を少しずつ抑制していく治療方法です。

 

アレルゲン免疫療法の開発が待ち遠しい

 

今後、アニサキス症になる人の数は増加する可能性がありますので、アニサキス症の場合もアレルゲン免疫療法のような根治療法の開発が進んでいくことでしょう。

 

※アレルギーの根治療法については、「花粉症対策全集―対症療法と根治療法」も参考になります)