アニサキス症の潜伏期間とは?
そもそも“潜伏期間”とは、いったいどのような期間なのでしょうか。
一般的に潜伏期間といえば、ある病気にかかってから、実際に症状が現れるまでのタイムラグのことをいいます。
それでは、アニサキス症の場合は潜伏期間はあるのでしょうか。
アニサキス症の場合、潜伏期間というよりもどちらかというとアニサキスが発症部位に到達するまでの時間といってもよいでしょう。
つまり、胃に発症する「胃アニサキス症」の場合は、口からアニサキス幼虫が侵入した後、胃の中でさまざまな物質をかき分け胃の粘膜に到達する時間として1時間から数時間かかっていると考えた方が分かりやすいと思います。
小腸で発症する「腸アニサキス症」の場合は、さらに到達時間がかかりますので、十数時間から数日後という時間差が生じます。
さらに、胃や腸を通り抜けて発症する「消化管外アニサキス症」の場合は、さらに時間経過が必要となりますが、それ以前に胃や腸を突き抜ける際に激しい痛みが現れるのが普通です。
アレルギーの発症場所で潜伏期間も変わる?
アニサキス症の潜伏期間(発症までの時間)の違いについて、“アレルギー反応”という観点から考えてみます。
アニサキス症がアレルギー反応であるとすれば、体内に入った時点で反応が現れ始めるのが自然であり、胃や腸といった発症部位によって時間差が生じるのはむしろ不自然なのでは?と思われる方も多いのではないでしょうか。
実は、アニサキスが刺さった部位で“好酸球の増加”が起こり、これによって即時性の高い“T型アレルギー”の反応が急激に現れると考えられています。
そう考えると、アニサキス症の発症部位によってアレルギー反応が出るまでの時間にも差が生じる、つまり潜伏期間が違うということが理解できます。
アレルギー反応の型による時間差もある?
アレルギー反応には、作用する仕組みの違いによっていくつかの「型」に分類されます。
詳細は別ページで説明しますが、アニサキス症の場合もアレルギー反応の出方が常に同じではなく、違う「型」で発症する場合があると考えられます。
報告されているアニサキス症例にはそれを示す具体的な結果は見つかっていませんが、動物に対する実験ではI 型(即時型)以外にも、III 型(免疫複合型)及び IV 型(遅延型)のアレルギー反応を示す例が報告されています。
ですから、I 型の場合は潜伏期間が最も短く、III 型は中間、 IV 型は最も長くなるという特徴が、アレルギー反応の時間差になっているという推測が成り立ちます。