そもそもどうして特許を取ったのか?
昨年(2018年)あたりから「アニサキス症に正露丸が効くらしい」といううわさがネット上で流れました。
そもそもどうしてそのようなうわさが流れたのでしょうか。そしてそれは果たして本当なのでしょうか。
この話の発端となったのは、正露丸の製造販売元である大幸製薬が、正露丸の成分である「木クレオソート」がアニサキスの活動を抑える効果があるとして、2014年に正露丸を「消化器アニサキス症用薬剤」として特許を取得したことが始まりです。
それでは、どうしてそのような特許を申請したのか、その経緯を調べてみました。
大幸製薬の現社長である柴田高さんが、生の魚介類を食べた後に激しい腹痛に見舞われました。
そこで、試しに自社の正露丸を服用したところ、腹の痛みが1〜2分で消滅したというのです。
病院で受診したところ、内視鏡検査で確かにアニサキス幼虫が胃の中にいるのが見つかり、しかもアニサキス幼虫はほとんど活動していない状態だったので、その場で鉗子により容易に摘出することが出来たそうです。
その後、もう一人の社員も社長と同様のケースであったことが確認されたことから、これは正露丸の成分である木クレオソートによる抑制効果であると確信し、特許を出願したそうです。
正露丸の特許にはどんな影響があるのか?
アニサキス症の症状緩和や予防などの効果を示した正露丸の特許は、アニキサス症の治療分野で今後どのような影響を及ぼすのでしょうか。
専門家などによると、正露丸の成分である木クレオソートに関して「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)によりアニサキス症の薬剤としては認められていないため、用途として表示することは出来なくて。あくまでも活用できるというレベルだそうです。
また、もし一般の消費者が許可なくアニサキス症の症状緩和や予防を目的に正露丸を服用したとしても、それを理由に特許侵害になることはありません。
ですから、明確な影響はないと思いますが、アニサキス症を心配する人々がいざという時のために正露丸を購入することにより、売り上げが上がる可能性は十分あります(現に株価が上がったという話も聞かれます)。
正露丸という薬は、一時期、“発がん性があるから買ってはいけない”などといった悪いうわさも囁かれ、売り上げが低迷した時期もあり、柴田社長もそれらの誤認・誤解を払拭するためにさまざまな苦労をされてきたといいます。
今回の“アニサキス症に正露丸効く”という話題は、同社にとってこれまでの悪いうわさを払拭するチャンスともいえるのではないでしょうか。
正露丸の実際の効果は?
それでは、実際に正露丸はアニサキス症の症状に効くのでしょうか。
これについては正直、奏功例が少なすぎるので、はっきりとはいえません。
ただし、メカニズム的には以下のような推測は成り立つ可能性はあります。
つまり、アニサキス幼虫が体内に侵入して胃の粘膜に刺さると同時にアレルギー反応も活発化し、激しい痛みに襲われる。
そのタイミングで正露丸を服用することにより、正露丸の主要成分である木クレオソートの効果でアニサキス幼虫の体動が抑制される。
動きが止まったアニサキス幼虫は、胃粘膜へ刺さり込む動きも緩やかとなるのでアレルギー反応も沈静化し、激しい腹痛なども緩和される。
さらに、内視鏡検査で見るとアニサキス幼虫が胃粘膜への刺さり込む動きをやめているため、虫体を取り出すことも容易となる。
実際に正露丸を水で溶いた溶液にアニサキス幼虫を浸した状態で観察すると、体動が鈍ったり体動が止まったりすることは明らかにされています。
正露丸で完治はしない
正露丸にアニサキス症の症状の緩和や予防の効果があったとしても、あくまでも一時的なもの(対症療法)であり、決してアニサキス症が完治するわけではありません。
ここのところは、勘違いしないように注意して下さい。
アニサキス症はアレルギーの一種なので、アレルゲンであるアニサキス幼虫が体内から排除されない限りはアレルギー反応は継続します。
現に、死んだアニサキス幼虫でもアレルギー症状が現れる人もいるので、人それぞれでアレルギー反応の程度が違うというふうに理解するべきです。
たまたま、正露丸の服用によって一時的に症状が緩和されたとしても、アレルゲンは体内に残っているわけですから、医療機関を受診して、内視鏡検査で摘出するなどの治療が必要です。
しかし、もし正露丸でアニサキス症による激しい腹痛を一時的にでも緩和出来るとすれば、それはとても有効な手段といえます。