アニサキス症とアニサキスアレルギーは別物?
アニサキス症の解説の中で、よく聞かれる言葉に“アニサキスアレルギー”というのがあります。
果たしてアニサキス症とアニサキスアレルギーは、どこが違うのでしょうか。
実は、「アニサキス症の痛みはアレルギーが関与している?」のページでも解説しているとおり、アニサキス症自体、アレルギー反応の一つであるとの考え方が示されて、現在では主流となっています。
この考え方が主流となる以前には、アニサキス症と併発して現れる「アレルギー症状」ということで、あくまでもアニサキス症とは別の物と考えられていました。
その際に主な症状として示されていたのは、「じんましん」や「アナフィラキシー」(血圧低下、呼吸不全、意識障害など)です。
アニサキス症の代表的症状である腹痛や嘔気、嘔吐、下痢については、当初は毒性の反応が疑われていましたが、近年になって実はこれらも“アレルギー反応”による症状であることが分かってきました。
ですから、アニサキス症とアニサキスアレルギーは同じものと考えれば、あえて区別する必要性はなくなってきています。
アニサキスアレルギーで注意すること
アニサキス症がアレルギーの一種であることが分かった以上、アレルギーゆえに注意しなければならないことがいくつかあります。
1.アニサキス幼虫の生死にかかわらず、発症する。
アニサキス症がアレルギーである以上、そのアレルゲンであるアニサキス幼虫の生死にかかわらず症状が発症する可能性があるということになります。
ということは、魚を焼いても煮ても、あるいは冷凍にしたものでも、魚の中にアニサキス幼虫が寄生していればアニサキス症になるということです。
2.何度も繰り返し発症する。
アニサキス症がアレルギーである以上、アニサキス幼虫が寄生した魚を食べることにより何度でも繰り返し発症する可能性があります。
ただし、どんな症状が現れるのか、あるいは症状の程度は人によって違います。
3.今のところ免疫療法はない。
アニサキス症がアレルギーである以上、アレルギーを治すためには免疫療法が必要となりますが、現在のところありません。
ですから、症状が出たときはアレルゲンとなるアニサキス幼虫を摘出したり、症状を緩和する薬を投与するなどの「対症療法」に頼る以外にありません。
(詳しくは「アニサキス症の治療法」を参照)
これらのことから、アニサキスアレルギーがある人は、自らが魚介類を食べる際に、アレルゲンが確実に存在しないことを十分確認してから食べるよう、細心の注意が必要となります。