アニサキス症を判断する問診の重要性
アニサキス症の症状が現れた場合、それが本当にアニサキス症によるものなのかを判定しなければ適切な治療をすることが出来ません。
そのため、医療機関では通常、アニサキス症かどうかを判定するため、治療前に必ず検査を行います。
ところで、アニサキス症の検査の前に最も重要なことがあります。それは「問診」です。
問診とは、医師が患者さんに対して、現在の自覚症状とか病状に関して心当たりのあること、これまでに同様の症状になったことがあるかどうか、現在までにかかった病歴などを問答方式で確認することです。
特にアニサキス症の場合は、発症の起点として“どんな魚介類をどんな状態でいつ、どのように食べたのか”というのが大変重要な判断要素になってきます。
たとえば、アニサキス幼虫がいた可能性のあるシメサバを昨夜食べて、激しい胃痛を訴えているとすれば、「劇症型胃アニサキス症」の疑いが強くなります。
ところが、ここ数日間は魚介類をまったく食べていないとしたならば、別の病気を疑うことになります。
最近では、アニサキス症についても遅発性(遅れて発症する)の可能性も視野に入れなければならないので、食歴確認は1〜2日前のだけではなく4〜5日前にさかのぼって確認する必要が高まっています。
アニサキス症の疑いが強まったら?
このように、問診による臨床的事実と症状(腹痛や下痢、じんましんなど)による客観的事実を総合的に判断して、アニサキス症の疑いが強まった場合には、その症状が現れている部位に適した以下のような検査を行います。
1.胃アニサキス症の検査
患者さんが上腹部の痛みを訴えている場合は、胃アニサキス症の可能性が高いと判断し、もっとも症例の多い「アニサキス幼虫が胃の粘膜に刺さっている」と診断されます。
そうなると、内視鏡(胃カメラ)を使って胃の状態を調べることが最も有効であることから、「内視鏡検査」を行います。
もしも内視鏡検査によりアニサキス幼虫が見つかれば、その場で鉗子によりアニサキス幼虫を摘出することも出来ます。
2.腸アニサキス症、消化管外アニサキス症
腸アニサキス症や消化管外アニサキス症の場合は、内視鏡検査によるアニサキス幼虫の確認は期待できませんので、主にCTによる検査を行います。
アニサキスの幼虫が刺した内臓の部位には通常、炎症反応が現れます。併せて腸の穿孔せんこうの有無や腸閉塞の有無を確認する場合もCT検査が効果的です。
ほかにも超音波(エコー)検査や腹部X線(レントゲン)検査も併用する場合があります。
血液検査による判定とは?
アニサキス症がアレルギー反応であることが判明してからは、アニサキス症を見分ける方法として「血液検査」が多用されています。
具体的には「特異的IgE検査」というもので「IgE RAST(ラスト)」ともよばれます。
この検査によってアレルギーの元となる特定のIgE、つまりアレルゲンごとに反応するの可能性のあるIgE抗体の量を調べることが出来ます。
検査対象となるアレルゲン項目については、ジャンルごとに分かれており、全部で100項目以上あります。
たとえば、“樹木花粉”のジャンルならスギやヒノキ、“雑草花粉”ならブタクサ、ヨモギ、“動物”ならイヌ、ネコ、“昆虫”ならゴキブリ、ミツバチ・・・といった形で、さまざまなアレルゲンを対象に抗体の量を調べることがf出来ます。
ラスト検査が一般的に行われるパターンとしては、何かを食べてアレルギー(発疹やかゆみ)が出た場合に、アレルゲンの疑いのある食品を対象に検査して何がアレルゲンであるかを特定するという方法です。
通常、保険適用の範囲は1回の検査で13項目までとなっているので、アレルゲンの可能性が高い項目を選んで検査します。
検査結果は「クラス」で判定しますが、クラスは0から6の7段階に分かれて0や1なら陰性、2以上なら陽性とされ、クラスが高くなるにつれて、アレルギー反応が高いということになります。
ただし、ラスト検査で「陽性」という結果が出たとしても、アレルゲンとして確定するものではなく、あくまでも「アレルゲンの可能性がある」ということに過ぎません。
しかし、ラスト検査によってクラスが高く出る物質はアレルギー症状の原因となる可能性が高いことは間違いありませんので、アレルギー治療を進めるうえでとても参考になります。
数多いアレルゲンの項目の中で、寄生虫として「アニサキス」の項目があります。
これによって、たとえばアニサキスのクラスが「5」とか「6」の高い数値なら、かなりの確率でアニサキスによるアレルギーと判断することが出来ます。