アニサキス症とは、どんな病気なのか?
“アニサキス症”とは、いったいどのような食中毒なのでしょうか。
簡単に言うと、“アニサキスという寄生虫によって引き起こす食中毒の症状”のことをいいます。
アニサキス幼虫が寄生している魚介類をヒトが生で食べることによって、 アニサキス幼虫が体内に入り込み、胃壁や腸壁に刺さり込んで食中毒の症状(アニサキス症)を引き起こします。
アニサキス症には、症状の程度により「劇症型」と「緩和型」に分類されますのが、多くの場合は「劇症型」の方ですので、急性の腹痛症状が現れます。
アニサキス症は魚介類の生食後、1時間から十数時間後に発症し、発症から少なくとも1週間以内には死滅して体内に吸収されるか体外へ排泄されます。(詳しくは「アニサキス症の症状」を参照)
アニサキスとは、どんな寄生虫なのか?
アニサキス症を引き起こす原因となる“アニサキス”という寄生虫は、いったいどんな寄生虫なのでしょうか。
アニサキスは線虫の一種で、その幼虫は、長さ2〜3cm、幅は0.5〜1mmくらい、白色の少し太い糸のような形をしています。丸まっていることもあります。
もともとアニサキスは海水の中で卵がふ化し、オキアミ(体調3p〜6pのエビに似たプランクトン)に食べられて幼虫(第3期幼虫)となります。
海にすむ哺乳類(クジラやイルカ、アザラシなど)がこれを食べると、体内で寄生し成虫となりますが、サバやイワシ、カツオ、サケ、イカなどの魚介類が食べると、成虫にはならず幼虫のまま寄生します。
それらの魚介類も最終的には哺乳類に食べられ、哺乳類の体内で成虫になったアニサキスが卵を産み、それが体外へ放出されオキアミがそれを食べて・・・といった食物連鎖を繰り返しています。
アニサキスの幼虫が寄生する魚介類は、主にサバやアジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカですが、このほかにも150種以上あるといわれています。
(アニサキス症になりやすい魚介類については「アニサキス症の原因」を参照)
アニサキス症がこれほど注目を集めるワケとは?
アニサキス症が、なぜこれほどまでに世間から注目を浴びるようになったのでしょうか。
これには大きな理由があります。実は近年、アニサキス症の取り扱いに大きな変化があったからです。
具体的には、1999年(平成11年)に「食品衛生法」が改正され、アニサキスを含む寄生虫による衛生上の危害も食中毒として扱われるようになったことがきっかけです。
さらに、2012年(平成24年)には「食品衛生法施行規則」の一部が改正され、「食中毒事件票」(食中毒が発生した際に保健所が国に報告するための報告様式)において、食中毒の病因物質の種別欄に“アニサキス”がクドアなど他の寄生虫のともに新たに追加され、2013年(平成25年)1月1日からは個別に集計されるようになったのです。
これらの変更などにより、アニサキス症例の報告が義務化され、それまでは見過ごされてきた“アニサキス症”という病気が正式に報告されるようになりました。
そういう意味では、実際にはアニサキス症は以前から多かったものが、これらの取り扱いの変更によって、実態がより浮き彫りになったともいえます(詳しくは「アニサキス症が増えた理由」を参照)。