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IgE抗体検査とは?

 

 

アレルギー検査の中で、最もポピュラーな検査として「IgE抗体検査」があります。

 

“IgE”とは、血液中や組織液中に存在する「免疫グロブリン」と呼ばれる抗体の一種です。

 

Ige抗体とは

 

免疫グロブリンには、IgGIgAIgMIgDIgE5種類があり、いずれも細菌やウィルスなど外からの有害な異物の侵入を防ぎょするための『免疫』というシステムにおいて重要な働きをするタンパク質です。

 

その中でも“IgE”抗体「肥満細胞」と呼ばれる細胞と結合し、アレルゲンに出会うと肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出されさまざまなアレルギー反応を引き起こします。

 

IgE抗体は、通常、免疫グロブリンの中で最も量が少ない抗体ですが、アレルギー体質の人の場合、通常の人の量より大幅に増えているといわれています。

 

また、IgE抗体はアレルギーの中でも“T型アレルギー(即時型)”に大きく関与しており、アトピー性気管支ぜんそくじんましん花粉症アレルギー性鼻炎などの原因になります。

 

※IgE抗体を発見したのは、日本の免疫学者である石坂公成氏です(詳細は「アレルギー検査の歴史」を参照)

 

 

これらのIgE抗体の特徴などを踏まえて行われるIgE抗体検査は、「非特異的IgE抗体検査」「特異的IgE抗体検査」の2つがあり、いずれも血液を採取して行う“検体検査”の一種です。

 

非特異的IgE抗体検査の概要

 

“非特異的IgE抗体検査”とは、『採取した血清中のIge抗体の総量を測定する検査』です。

 

前述したとおり、普段から何らかのアレルギーに関わっている人、いわゆる“アレルギー体質”といわれる人の場合、通常は極めて少量であるはずのIge抗体値が普通の人より大幅に増加している可能性が高いとされています。

 

非特異的IgE抗体検査とは?

 

このようなIge抗体の特徴を踏まえ、血清中のIge抗体の総量(「総IgE値」ともいう)を測定することによって、“アレルギー体質であるかどうか”がある程度判断することが可能となります。

 

非特異的IgE抗体検査の方法

非特異的IgE抗体検査は、患者さんの血液を採取して、その中の“Ige抗体の量”(濃度)を測定する検査です。

 

採取した血液は、検体となる“血清”に分離し、所定の方法により測定します。

 

なお、非特異的IgE抗体検査の場合、血清中のIgE抗体を特定のアレルゲンではなく、“抗IgE抗体”というものと反応させ、IgE抗体の量を測定します。

 

たとえば、「イムノキャップ総IgE」は、蛍光酵素免疫測定法(FEIA)を用いた検査です。

 

具体的には、抗IgE抗体を結合したスポンジ上で検体中のIgEと反応させ、さらに酵素標識IgE抗体および現像剤を加え培養し、形成された蛍光物質の蛍光量に基づき総IgE量を測定します(蛍光量は血清中の IgE 濃度に正比例します)。

 

イムノキャップ

 

非特異的IgE抗体検査には、イムノキャップ以外にも化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)を用いる「アラスタット(Ala STAT 3g-Allergy)」や酵素免疫測定法(EIA法)を用いる「オリトンIgE」などがあります。

 

※これらの検査法の原理や具体的な検査手順については省略します。

 

非特異的IgE抗体検査の判定基準

 

非特異的IgE抗体検査における年齢別の基準値は、下表のとおりです。

 

検査の結果、この基準値を超える数値が測定された場合、アレルギー体質の可能性が高いと判定され、数値が高ければ高いほど、アレルギー体質度が高いといえます。

 

(非特異的IgE抗体検査における基準値)

年  齢 基準値(IU/ml)
1歳未満 20以下
1〜3歳 30以下
4〜6歳 110以下
7歳以上 170以下

 

ちなみに、“非特異的IgE抗体検査の数値が高い”ということは、すでに何らかのアレルゲンに反応している可能性があり、アレルギー症状が伴わない場合であっても、たとえばダニやハウスダストなどの慢性的な要因が疑われます。

 

また、非特異的IgE抗体検査特異的IgE抗体検査同時に実施した場合に非特異的IgE抗体値(総IgE抗体値)が高く特異的IgE抗体値が低い場合は、特異的IgE抗体検査のアレルゲンに含まれない他のアレルゲンの可能性が疑われます。

 

非特異的IgE抗体検査は通常、特異的IgE抗体検査の前、あるいは特異的IgE抗体検査と一緒に実施されます。

 

非特異的IgE抗体検査の診療報酬と自己負担額

非特異的IgE抗体検査の診療報酬は

 

非特異的IgE抗体検査における診療報酬点数及び自己負担額(窓口で支払う料金)は以下のとおりとなります。

 

検査料(非特異的IgE半定量・定量) 100点
検体検査判断料            144点

 

※検査結果は通常2〜3日要しますので、さらに初診料(288点)及び再診料(73点)が別途掛かります。

診療報酬点数

100(検査料)+144(検体検査判断料)+288(初診料)+73(再診料)=605(点)

自己負担額

605(点)×10(円)×0.3(自己負担率)1,815(円)

 

※あくまでも概算の金額として参考にしていただくためのものであり、自己負担額を確定するものではありませんのでご了承ください。

 

なお、消費税増税分診療報酬の改定の都度対応しているため、別途に追加負担は発生しません

 

特異的IgE抗体検査の概要

 

“特異的IgE抗体検査”とは、『アレルギーの原因物質(アレルゲン)を特定する検査』です。

 

非特異的IgE抗体検査アレルギー体質であるかどうかを判断するための検査であるのに対し、特異的IgE抗体検査は場合は“アレルギーの原因となる個別のアレルゲンを特定するための検査”となります。
特異的IgE抗体検査とは
そのため、被検者から採取した血液を個々のアレルゲンと接触させ、活性反応(具体的にはIge抗体値の増加)をみて判断します。

 

※従来はペーパーディスクを固相としてアレルゲンを吸着させる「RAST法」という検査法が主流でしたが、近年ではセルローススポンジを固相としてアレルゲンを吸着させる「CAP法」が主流になっています。

 

特異的IgE抗体検査に用いるアレルゲン

 

特異的IgE抗体検査に用いるアレルゲンは、個別のアレルゲンごとに指定して検査するための「シングルアレルゲン」や、原因分類により数種類のアレルゲンを混合した「マルチアレルゲン」、さまざまなアレルゲンを組み合わせた「アレルゲンセット」などがあります。

 

詳しくは「アレルギー検査のアレルゲン(種類)」を参照してください。

 

シングルアレルゲン

花粉症のアレルゲン

 

いわゆる個別のアレルギーについて検査するためのアレルゲンエキスで、200種類以上あります。

 

シングルアレルゲン、「室内塵」、「ダニ」、「樹木花粉」、「イネ科植物花粉」、「雑草花粉」、「真菌・細菌」、「動物」、「昆虫」、「寄生虫」、「職業性アレルゲン」、「食物アレルゲン」、「薬物」に分類され、それぞれ分類ごとにさらに個別にアレルゲンエキスがあります。

マルチアレルゲン

“マルチアレルゲン”とは、原因分類による主要なアレルゲンを混合したものです。

 

イネ科雑草動物上皮食物カビ雑穀の各パネルに分かれており、それぞれ4〜6種類のアレルゲンが混合されています。

 

マルチアレルゲンは、“どの原因分類のアレルゲンが影響しているのか”を大まかにつかむためには有効で、診療報酬についてもシングルアレルゲン1種類と同様に扱えるため経済的です。

 

ただし、シングルアレルゲンのように個別のアレルゲンを特定することはできません

 

アレルゲン・セット

“アレルゲンセット”は、アレルゲン別・環境別年齢別症状別など、さまざまな条件で数種類のアレルゲンを組み合わせたものです。

 

アレルゲンセットの場合、マルチアレルゲンとは違い、組み合わせた数種類の個別アレルゲンごとに判定が出来ますが、セット内の個別アレルゲンを変更することはできません

 

Viewアレルギー39・MAST48

View39など

 

近年になって、「Viewアレルギー39」「MAST48」など、一度に大量のアレルゲンを検査できるオプション検査も出現しています。

 

Viewアレルギー39は、吸入系接触系食物系など39種類のアレルゲンを測定することができます。

 

MAST48の場合は、さらに多い48種類のアレルゲン測定が可能です(ただし、一部混合アレルゲンを含みます)。

 

なお、これらの検査はアレルゲンセットと同様に“セット内の個別アレルゲンを変更することは不可”となっています。

 

いずれの検査も、保険適用範囲内でこれだけ大量のアレルゲンを一度に調べられるので、経済的にはお得な検査といえます。

 

 

 

特異的IgE抗体検査の方法

検査の手順

患者さんから血液を採取し血清を取り出し、ペーパーディスクスポンジ等に吸着された特定のアレルゲンに接触させた後、一定時間経過後に血清中のIge抗体の量(濃度)を測定します。

 

検査自体は、患者さんから一般的な血液検査と同様の採血を行い、それを検査のために遠心分離などの行程により血清を取り出し、所定の方法で検体を測定・判定します。

 

採血は通常と同じ
なお、実際の判定・測定については経済性・効率性の観点から外注(外部の専門検査施設等に依頼)しているケースがほとんどのようです。

 

※測定方法などは専門的な内容となるので省略します。

 

 

特異的IgE抗体検査の判定

特異的IgE抗体検査判定は、IgE抗体濃度(UA/ml)Iを測定し、その数値により判定します。

 

Ige抗体の測定値は、“クラス”という単位を用い、段階的に量をわかりやすく示すためクラス0〜6までの7段階で示す方法がとられています。

 

クラス0は陰性(アレルゲンの可能性は低い)、クラス1は疑陽性(アレルゲンである可能性が疑われる)、クラス2以上は陽性(アレルゲンの可能性が高い)と判断します。

 

特にクラス4以上の場合は“強陽性”ということで、大半の患者さんがアレルギー反応を示すレベルとされています。

 

(測定値の判定基準)

クラス IgE抗体検値(UA/mL) 判 定
0 0.35未満 陰性
0.35以上0.7未満 擬陽性
2 0.7以上3.5未満 陽性
3 3.5以上17.5未満 陽性

4

17.5以上50未満 強陽性

5

50以上100未満 強陽性
6 100以上 強陽性

 

※判定は、あくまでもアレルゲンの可能性を明示するものであり、原因アレルゲンを断定するものではありません

 

検査結果の表示

特異的IgE抗体検査の判定結果については、通常、「検査結果報告書」などのタイトルがついた書類に印字され患者さんに提示されます。

 

様式はさまざまですが、一般的には次の事項が掲載されています。

 

・非特異的IgE抗体検査の数値(総Ige)
〜特異的IgE抗体検査と併せて非特異的IgE抗体検査も行うことが多いので、様式でもセットになっています。

 

・各アレルゲン名
〜検査対象であるアレルゲン名が羅列されています。

 

・測定結果(数値)
〜各アレルゲンごとの測定値が掲載されます。数字で表す場合がほとんどですが、グラフのように表示するケースもあります。

 

・クラス値
〜0から6までのクラスの値が掲載されます。こちらも数字での掲載に加え、より見やすいようにクラスの値を印で横方向に表示をするケースが多いです。

 

・判定基準
〜検査の判定基準(数値によってのクラス分け)の解説が掲載されています。

 

特異的IgE抗体検査の結果報告

 

ほかには、表をみる際の留意事項とか、アレルゲンの解説などを掲載しているものもあります。
※検査結果の様式は、検査キットの販売会社や検査機関などによって異なります。

 

 

 

特異的IgE抗体検査の費用

特異的IgE抗体検査の診療報酬

基本的にアレルゲン1種類につき110点と決められています。

 

シングルアレルゲン

よって、シングルアレルゲンの場合、検査対象アレルゲンの種類×110点

 

特異的IgE抗体検査の保険適用範囲は「1,430点まで」となっていますので、保険適用を受ける場合は13種類まで(110×13=1,430)となります。

 

マルチアレルゲン

マルチアレルゲンについては、原因種類が同じ分類のアレルゲン数種類を混合したものですので、混合種類の数に関係なく、「1種類」とみなされますので、シングルアレルゲンの1種類と同じく110点となります。

 

アレルゲンセット

アレルゲンセットについては、セットされた個別アレルゲンごとに110点となりますので、一般的に組み合わせるアレルゲンの数は13種類までとなります。
16種類のアレルゲンセットが保険適用上限の1,430点とされているキットもあるようです。

 

View39・MAST48ほか

通常、アレルゲン1種類につき110点、保険適用の上限1,430点というしばりがあるのですが、近年登場したView39MAST48といった一度に大量のアレルゲンを判定できるキットの場合、なぜか保険適用上限の1,430点に設定され、保険適用が認められています

 

保険適用で大量アレルゲンを判定

 

※いろいろと情報収集を試みましたが、その理由を示す確信的な資料は見つかりませんでした。

 

特異的IgE抗体検査の自己負担額

それぞれ、検査するアレルゲンの種類や検査セットの違いにより自己負担額も当然変わりますが、一般的なケースとしておおむね次のような金額になります。

 

シングルアレルゲンの場合

シングルアレルゲンを選択する場合は、推定されるアレルゲンがある程度絞り込まれているはずですので、種類数としては一ケタ(9種類以下)の場合が多いと思われます。

 

診療報酬点数

 

・検査料(特異的IgE半定量・定量) 110点
・検体検査判断料          144点
・初診料              288点
・再診料               73点 ※検査結果が数日かかるため

 

※たとえば、シングルアレルゲン5種類と非特異的IgE抗体検査(総Ige)を組み合わせた場合、
550(検査料)+100(総Ige)+144(診断料)+288(初診料)+73(再診料)=1,155(点)

 

自己負担額(3割負担の場合)

1,155(点)×10(円)×0.3(自己負担率)=3,465円

 

なお、消費税増税分は診療報酬の改定により対応しているため、別途に掛かりません。

 

自己負担額の計算

 

マルチアレルゲンの場合

マルチアレルゲンは、どのような原因分類に起因するアレルギーなのかを判断するために実施する検査ですので、一通りのマルチアレルゲンを検査するのが一般的と思われます。

診療報酬点数

※現在、マルチアレルゲンとして5〜6種類出ていますので、仮に6種類すべてを検査する場合(併せて総Igeも同時に行う場合)、
660(検査料)+100(総Ige)+144(診断料)+288(初診料)+73(再診料)=1,265(点)

 

自己負担額(3割負担の場合)

1,265(点)×10(円)×0.3(自己負担率)=3,795円

 

アレルゲンセット、View39・MAST48などの場合

現在、出ているアレルゲンセットは、アレルゲン種類が4〜13種類(近年になって16種類のものも出現)です。

 

※なかには個別のシングルアレルゲンとマルチアレルゲンが組み合わさったセットもあります。

 

診療報酬点数

いずれにしても、最大で保険適用となる1,430点に収まる計算となります。
※View39やMAST48については、すでに触れたとおり「1,430点」とされています。

 

1,430(検査料)+100(総Ige)+144(診断料)+288(初診料)+73(再診料)=2,035(点)

自己負担額(3割負担の場合)

2,035(点)×10(円)×0.3(自己負担率)=6,105円